2008年7月29日火曜日

北岳バットレス

北岳(3,192.4m)は、富士山に次いで日本で2番目に高い山。
その東面に位置する北岳バットレスに登ってきました。

北岳バットレスといえば第四尾根が有名ですが、その有名さゆえ常に大混雑。
相当な待ち時間が発生し、最後まで登れずに途中で引き返すこともしばしばあるという。

そんな大混雑の第四尾根を敬遠した今回の山行。

以下、大まかな行程。

7/25 移動
  • 22:20 都内発
  • 25:00 芦安温泉着、野宿
  • 26:00 就寝
7/26 北岳入り~取り付き偵察
  • 5:40 広川原行きバス乗車
  • 7:30 広川原から行動開始
  • 9:30 白根御池小屋付近でテント設営
  • 12:00-14:00 dガリー取り付き偵察
  • 15:00 白根御池小屋に戻る、夕飯など
  • 19:00 就寝
7/27 バットレス登攀~下山~帰京
  • 1:00 起床
  • 2:00 出発
  • 2:20 二股に荷物デポ
  • 4:30 dガリー取り付き
  • 5:00 登攀開始 dガリー~下部フランケ~上部フランケ
  • 13:00 稜線に出る
  • 14:20 二股で荷物回収
  • 16:30 広川原到着
  • 17:15 芦安温泉行きバス乗車
  • 18:30 芦安温泉~帰京




北岳は大きいですね~


広川原~山頂の標高差1,650m。
最終日はクライミングを終えた後、1,650mの下山が待っている。
しかも最終バスの17:15というタイムリミットつき。

直前のトラブルで1名不参加につき3人パーティー。
ベテランN氏のほかは、K嬢と私ともにアルパイン1年生。
元(現役?)フリークライマーのK嬢は歩きが苦手(特に下山)。

不利な要素が重なる。


タイムリミットがある以上、時間を前倒すしかない。
とはいえ、真っ暗での登攀はあまりに危険。
いろいろ計算したうえで1時起き2時出発と決定。
取り付きで準備を終えて夜明けを待つという作戦。

速やかに取り付けるように土曜日は取り付きまでのアプローチを偵察。
日曜日は真っ暗な中でのアプローチになるので偵察は入念に。
特に雪渓の様子は把握しておかなければならない。

実際、雪渓は取り付き地点のすぐ手前まであった。
どこで雪渓を越えるかは重要なポイント。
下手に薄い箇所を通過すると崩壊してシュルントにまっ逆さま~
ということになりかねない。
通過しやすい箇所を見つけてステップを切っておく。

いやはや。
この偵察は実に有効だったねぇ。
当日とか真っ暗ななかで雪渓の偵察なんかしてたら危険だし、それだけで30分や1時間のロスだもの。

偵察を終えた土曜日は、さっさと夕飯食って寝る!



翌朝、、、というか夜中。
簡単に朝飯を済ましてテントをたたんで2時には出発。
それでもなんと、ガイドパーティーに僅差で先を越された。
はやぃ、、、

北岳はこれが普通なのかな?
このパーティーは第四尾根に登るとのこと。

ヘッドランプで真っ暗な中をアプローチ。
星がきれい

偵察してるし真っ暗でも問題ない!
といいつつ、道を間違える私。。。
N氏の指摘がなければクライミングせずに登頂してしまうところでした。

順調なアプローチ。
日の出前に取り付き到着。
ご来光を拝んで、5:00登攀開始。


3人なのでN氏がダブルロープでリード。
K嬢、私が1本づつのロープに引かれてフォローで登る。

時間との勝負!
フォローはなんでもいいからスピード重視。

dガリー1P目は、ロープめいっぱい伸ばす。
2P目緩傾斜帯はコンテというか、、、3人同時に登って時間を稼いで下部フランケへ。


標高を上げたところで富士山が顔を出す。

下部フランケ出だしのスラブ。
ちょっと難しいのでA0でガシガシ登る。
クラック、凹角がもりだくさんで楽しい。

dガリーにトラバースして下部フランケ終了。9:30。
継続登攀のルートとして当初予定していたdガリー奥壁は難易度が高く時間的に無理そうなのでヤメ。
いくぶん易しい上部フランケへと変更。

とはいえ、その取り付きがよくわからない。
悩んだ末に、右上してみる。
なんと1P登ったら、そこはすでに上部フランケの中間部であることが判明。
結局、上部フランケの取り付きはわからなかった。


目の前にはマッチ箱。ここで第四尾根と合流。

12:30クライミングを終え、3人で固い握手。
稜線に出て、山頂往復10分程度も時間を惜しんでここはパス。
山頂は次回までおあずけ。
あとは1,650mの下山。

駆け下りるように下山。

そして広川原まであと10分という場所で夕立にやられました。しかも強烈な。
これはまずいと思ってカッパを着用するも、、、
すでにパンツの中までびしょ濡れダァ。
久しぶりに山中で大雨を食らいました。

しかも普段ザックカバーを持ち歩かないものですから(沢のクセで)。。。
ザックはたっぷり水を吸ってしまいました。


夕立は夕立らしく。
広川原に着く頃にはすっかり止んでいましたケド。


終わってみれば、本格的なアルパインクライミングをこなしたという満足感。
偵察の効果もさながら、とにかくN氏の神がかり的な時間の読みが見事的中したこと。
臨機応変にルートを変える柔軟性と判断力。
それでも読めない自然現象。
そしてなにより最終バスに間に合ったということ。


山登りは奥が深いなぁと、
あらためて思った山行でした。


2008年7月23日水曜日

2泊3日錫杖岳

海の日の3連休で山へ。
錫杖岳でクライミング。

谷川岳でアルパインの厳しさに打ちのめされたのが2週間前。
日帰りでさえも厳しいのに連日なんて。。。


予報では天気は心配なさそう。
金曜夜発。平湯のあたりで野宿。
槍見温泉~笠ヶ岳登山道を20kg以上の荷物を担いで約1時間半。
これから登る錫杖岳を横目に灼熱の登山道を汗ダラダラで登る。



出だしが遅いので懸念したとおり。テン場付近到着が9:30。
めぼしをつけていたテン場はすでに満杯。
第2候補もほぼ満杯で、あまり平らじゃない場所に何とかテントを張る。



準備をして、いざ出発!
目指すは左方カンテ。


メンバーは6人。
ベテランのNリーダー、
若手エースのI氏、
フリークライマーから転身のK嬢、
スーパーウーマンS姫、
岩稜の女王M女史、
へなちょこの私。

2人1組の3パーティー。
みんなで左方カンテを目指す。

1日目

さすが人気ルートの左方カンテ。
渋滞中。順番を待つ。
いい天気なのでとりあえず穂高を眺めながら待つ。



結局我々トップのI氏、K嬢ペアが取り付いたのが12時くらい。
S姫と私のペア。2番手で取り付く。

このルートは最近整備したとのことで、古いものや無駄な支点やロープは全て取り除いたとのこと。
クラックにはほとんど残置支点は無く、ナチュラルプロテクションつまり自分で支点を工作して登らなければならない。
それでもフェースにはたくさんリングボルトがあり、登りやすくルートが設定してあるようだ。


前半の核心部である3ピッチ目はリードで登る。
課された御題はフリー抜ける!

フリーとは岩を手足だけで攀じるという意味。
支点にかけたスリングを掴んだり、支点そのものに足をかけたりしないで登るということ。

ここは、露出感があって恐怖をそそる。
難しいのは支点の乏しいフェースでのたったの一手。
あらかじめ読んでいたトポ(ルートガイド)によるとフェースの出口にはガバ(ガバっと掴めるホールド)があるはず。
下から眺めてガバにめぼしをつける。
小さなスタンスにそぉっと乗り込んでガバを掴む。

ぅ~ん、快感!

あとはガバだらけ。
フリーで抜けることができたぞ!




K嬢、5ピッチ目を登るの図

ここは快適なフェース。支点がいっぱい。
K嬢、ランナーーとりすぎてロープが流れなくなっちゃいました。
傾斜が緩んだところの立ち木でビレー。

そんな一部始終を見ていた私はロープの流れには気をつけてみる。
ロープの流れが調子よくて、つぎの短いピッチもあわせて大テラスまで一気にリードしてみた。
トポでは計60mのルートになってるが、50mロープで余裕があるくらい。

で、大テラスは大渋滞。これから登るパーティーと、懸垂下降で降りるパーティーとでごった返し。
まだまだ時間がかかりそう。眠い。。。

そしてここからピッチがルートの核心になります。



リードはS姫。
出だしのチョックストーン越えにちょっと手間取ったけどホールドを見つけると、あっという間に乗り越える。
支点が少ないフェースもカムを華麗に使って攀じる。
左に廻ったスラブは支点なし。
難しくはない斜面とはいえ支点がないと思い切たムーブができないのだけど。
S姫にはそんなのカンケーないようで。
登り終わった感想は、『超快適~』だそうだ。

このピッチで切り上げて後は懸垂下降で降りる。
降りたところで午後7時。
テン場に戻った頃はすでに真っ暗でした。
近隣のテントの皆様、夜遅くご迷惑をおかけしました。

2日目

当然、朝の出発も遅く、近隣の方々より出発準備1時間遅れる。
いざ出発と思いきや、
雨が。。。
雨が降ったら岩は登れない。
先に出発していた方々も戻ってきました。

ということで1日暇に。(でも雨は2時間後に止んですっかり晴れました)

なので、いちど麓に下りて温泉ツアー。
まったりの休養日。

晩飯くって、3時起きを誓って早めに寝る。


3日目

3時15分起き。
まだ真っ暗。

朝飯パスタを食って、5時前に出発。1ルンゼへ。
いつもノロマな我々には上出来!

6時前に1番で取り付き!
これも上出来。

さて、1ルンゼは奇数ピッチが簡単で、偶数ピッチが難しい。
しかも、アブミ(縄はしご)ルートがあります。

昨日と同じくザイルパートナーはS姫。
私は当然奇数ピッチ。

1ピッチ目に初めてカムを使いました。
5ピッチ目は微妙なトラバース。
トラバース中は支点を1個も取れず。
これって、リードよりフォローが恐いんだよね~
ごめんなさい。。。

6ピッチ目はアブミルート。S姫リード。
私は外岩初アブミ。ロープがいっぱいで混乱だよ~

8ピッチ登って懸垂で下降。
全部出し切った感じ。
大満足。

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概して、錫杖岳は谷川岳に比べて岩がしっかりしている。
支点もしっかりしている。
フリークライミングのゲレンデみたいに安心して登れてすごくいい。
楽しくなってきた。



2008年7月7日月曜日

烏帽子沢奥壁凹状岩壁

先週に引き続き、またまたやってきました、一の倉沢。
天気もやっぱり微妙な感じでギリギリまで悩みましたが決行。夕立注意!

金曜夜初、ホテル谷川(通称)泊は先週と同じ。
天気予報などなどのコンディションをみて、土曜1日だけのアタック。
凹状岩壁に狙いを定める。

いやはや、、、
アルパインの難しさを思い知らされた山行でした。


梅雨の中休みではないが、ほんのちょっとした晴れ間。
ようやく一ノ倉沢全景を見て取れた。


まずは先週も登った雪渓とテールリッジからアプローチ。




暑いですね。
先週の倍くらい汗かいたね。

で、
登り始めたらなんともまあ余裕の無いこと。
写真撮る暇なんて皆無。
以下、文字だけの記録となりますが。

ザイルパートナーは経験豊富な若手エースIの氏。
先行パーティー1組は中央カンテを登る。
最初の2ピッチが我々が登ろうとする壁凹状岩壁と同じなのでちょっと待つ。

以下、概要。
  • 1P:私:トラバース&フェース。朝イチで体がなれていない状態で、見た目危ない感じなのでちょっと萎える。でも実際はホールドは豊富なので問題なし。トラバース~フェースでロープの流れが悪くなりそうな感じではあるが、フェースは斜度が寝てるし、ガバなので全く問題ない。
  • 2P:I氏:フェース。登るルートはいろいろ。上からの落石注意。あえて最短距離を直登すると難易度高し。右側を登ってトラバースするか、左の中央カンテに向かう支点でピッチを切るのがベスト。で、、、直登しようとした私は。。。
  • 3P:私:凹状岩壁り付きまでの短いフェース。核心はI氏にお願い。ということで核心部の取り付きまでリード。
  • 4P:I氏:核心部。いわゆる凹状岩壁。ここでやられました。。。(後述)
  • 5P:私:前ピッチの影響で精神的に憔悴状態でリード。ハングした岩場の切れ目から強引に。
  • 6P:I氏:クラックの名人I氏は、フレークに刻まれたクラックに魅せられる。何度かトライするも断念。フリークライミングなら話は別だが、絶対に堕ちられないアルパインでは無理。テラスからヤブを抜けて、立ち木でビレー。
  • 7P:私:立ち木からクラック下までの15m。距離的には終了点までいけるのだが、もう萎えてしまっているので、クラック名人にリードを託します。
  • 8P:I氏:クラック部を既存の支点を使わずに抜ける。チョックストーンにスリングまわしたりナッツとか使って支点を作る。カムは使わない。シブいね~
  • 下降:衝立岩北稜へ。ローソク岩を左から巻いて5mのクライムダウンは念のためロープをかけて懸垂下降で。その後、空中懸垂を含め6Pの懸垂下降でコップスラブに降り立つ。衝立前沢のF1も懸垂下降。雪渓にはダイナミックに乗り込む。
痛感したのは支点のボロさと岩の脆さ。
腐ったハーケンはカラビナをかける穴がすでに開いている。
ピッチの終了点にはぼろぼろのスリングに頭の折れたハーケンがぶら下がっている。
補強のためにハーケンを打つと岩ごとはがれる。
後続がいるから岩を落とすわけにはいかない。
今にもはがれそうなホールド。
ヒビが入っているスタンスに全体重で乗り込む。

全てが精神にこたえる。
先週の南稜は楽だった。
支点も岩もしっかりしていた。
ゲレンデとさほど変わりは無い。
やはり人気のルートなんだ。

と、まぁ。
泣き言を言ったところで、もう剱への階段は中盤を越しているわけで。
前進あるのみ。


~~~~ エピソード ~~~~
日曜日にはインドアクライミングジムPUMP2で練習したのだけれど。
しっかりした支点!
崩れないホールド!
素晴らしい。ぜんぜん恐くないです。
がんがん登れちゃいます。