2010年5月8日土曜日

北アルプススキー縦走

N島さんのお誘いを受け、Y沢さんと3人で行ったゴールデンウィーク山行。4月30日に休暇を取って7連休とし、うち6日を使って行ってきました。長い行程。営業小屋を積極的に使うという超豪華山行。

上高地から入って馬場島に降りる計画。
当初は黒部川を2度横断するという予定でしたが、思いのほか黒部川周辺の雪が少ないことが稜線から見てわかり、そのまま稜線を辿る事になりました。
それでも、黒部川の源流域に立ち入ったのは初めてのことで、その日本離れしたスケールには絶句。


■メンバー:N島さん(山スキー)、Y沢さん(テレマーク)、私(山スキー)
■4月29日(木)雨のちくもり
■タイム:6:10上高地~6:50明神館(2時間雨宿り)~10:30横尾~12:30槍沢ロッジ~16:50槍ヶ岳山荘(泊)

引用元:株式会社ウェザーマップ『気象人

新宿発の夜行バスに乗って上高地着。寝不足ながらもビーチサンダルのままスタートする。情報によれば2日前の時期はずれの降雪による雪崩の危険で涸沢は立入禁止らしい。これから登ろうとする槍沢も情報収集が必須。

寒冷前線通過に伴なう降雨という予報通りに、明神館に到着とともに降雨。止むまで2時間と見て、それまで暖かい蕎麦を食べながら雨宿りする。雨は次第に雪へと、そして吹雪へと変わる。

2時間という予想は虚しくも外れ、降り続く雪。ここであまり時間を費やすわけにもいかず、先を目指す。さすがにここからは兼用靴に替える。しかもY沢さん直伝の兼用靴のベロを外しての歩行。これがなんとも歩きやすい。

雨はすぐに小康状態となり、ついには止む。横尾を過ぎると道にも雪が目立つ。それでもスキー歩行にはまだまだ少ない。槍沢ロッジで大休止の後、ようやくスキーを装着。やはりツボに比べるとスキーの機動力の高さはすごい。

(N島さん撮影)

睡眠不足からくる疲労と強風でペースが一気に落ちたが、なんとか5時前に槍ヶ岳山荘に到着。なんと宿泊客は我々3人のみ。ビール一杯でいい感じで酔っ払う。夕食をたべて仮眠のつもりが本気寝。目覚めときはすでに消灯間近。


■4月30日(金)ホワイトアウト
■タイム:7:00槍ヶ岳山荘~槍ヶ岳(途中敗退)~8:00山荘~9:00千丈沢滑降~9:30四ノ沢~硫黄尾根~14:30双六小屋(大休止)~モミ沢滑降~15:30~二俣(泊)

引用元:株式会社ウェザーマップ『気象人

寒気が居座る。すっきりとした晴れは望めない。
すぐ近くなのに槍ヶ岳がくっきり見えない。朝食をたべてまずは空身で槍ヶ岳を目指す。しかし時間はまだ早いため雪は固く、ダブルアックスでないと危険と判断し、潔く引き返す。

ふたたび小屋でゆっくりし、9時に行動開始。やはり視界は悪いが、千丈沢に滑降開始。斜面は覚悟していたほどは固くはないと言える。標高を落とすにしたがって徐々に視界は晴れてくる。

パックパウダーをわずかに楽しむ。
(N島さん撮影)

1000mの標高差をあっという間に滑り降り、硫黄尾根に向かって四ノ沢を登りだす。途中から板をかついで上り詰めたのは確かに硫黄尾根ではあるが西鎌尾根にほど近い位置。ホワイトアウトのため、正確に位置を把握するのはなかなか難しかった。
西鎌尾根を西寄りの北に向かって歩き出す。尾根に寄り過ぎると雪庇になっていて危険なのでトラバース気味に歩く。風は強い。この状況でホワイトアウトではルートファインディングがむずかしい。

小さな黒い点。ホワイトアウトには貴重な目印。岩が露出しているのかと思って近づくと、ちいさなちいさな小鳥が雪面で必死に吹雪に耐えている。こんな小さな鳥たちさえ耐えているんだからと。勇気をもらった瞬間ではあった。しかし、ほんのちょっと進んだところにはまた別の光景が広がていた。小鳥たちがみな、雪に埋もれて死んでいるのだ。


ルートを間違えそうになりながらも、一瞬の晴れ間に見えた双六小屋に向かって進む。冬季小屋に一旦入る。すでに2人がいて、ほかに2人が泊まるために荷物をデポしていた。まだ時間があったので、我々は先に進むことにした。

モミ沢を滑降。して樅沢出合へ。地図には『モミ沢』と『樅沢』と別々に書いてあるが、読みはどちらも『もみさわ』なのだろうか。

とにかくここでテント泊。水も取れる。

■5月1日(土)くもりのち晴れ
■タイム:5:10出発~弥助沢~6:50三俣山荘~三俣蓮華トラバース~8:40 2661ピーク~9:00黒部五郎小屋~11:10黒部五郎岳~赤木平~14:30薬師沢~16:00太郎平小屋(泊)

引用元:株式会社ウェザーマップ『気象人

シュラフが薄かったか。寒くてなかなか寝入れず。それでも夜のうちに気温が上がったようで、自然と眠っていたようだ。3時過ぎに起床。出発の頃はすでにヘッデンがいらない明るさ。弥助沢を登って三俣山荘へ。

冬期に泊まれるかどうかは未確認ではあったが、当初の予定では三俣山荘に泊まる予定だった。今回偵察してみたが、どうやらここは冬期には泊まれないらしい。風が強いので長居は無用。

三俣蓮華は視界が悪いなかトラバース。途中、クトーが大活躍。クトーを持たないY沢さんはアイゼンを装着しての担ぎ。

黒部五郎小屋までの滑降は初めはガリガリ。下は快適パウダー。
小屋までおりると晴天。強い日差しがむしろ気持ちいい。

しばらく休憩の後、黒部五郎のカールに向かって登り始める。

(N島さん撮影)

右の尾根への登りはアイスバーンに乗った柔らかい雪というコンディション。ここでもクトーが大活躍。
黒部五郎岳ピーク手前のコルにてウマ沢を滑降開始。

黒部源流域を眺めながらの滑降。


登り返して赤木沢原頭滑降~赤木平へ登り返し~薬師沢左股滑降と登り下りを繰り返して、本日最後の登りは薬師沢から太郎平小屋まで。薬師沢は出合から少し上流で多少割れていて渡るのに場所を選んだだけで、それより上は完全に埋まっていた。
シールがよく効く雪を直登。薬師沢を登り上げて太郎兵衛平に上がるとすぐに小屋が見えて本日の山行終了。なんたるタイミングか、ちょうど飛騨トンネルから北ノ俣経由のM浦さんも同時に小屋入り。

■5月2日(日)晴れ
■タイム:7:30太郎平小屋出発~10:00薬師岳~11:30 2832ピーク~12:00間山~15:10越中沢岳~ヌクイ谷滑降~18:00五色ヶ原山荘(泊)

引用元:株式会社ウェザーマップ『気象人


7:00の朝食で腹を満たし、シールをつけて行動開始。M浦さんは軽快に滑降して薬師峠まで行く。表面は固くクトー無しでしばらく我慢したが、結局クトーをつける。クトーをつけると一気に楽になる。もっと早くに付ければいいものを。クトーをつけるか付けないかの判断は難しい。
Y沢さんはクトー無しでも、避難小屋手前の急登を少し担いだだけで登りきってしまう。

避難小屋からは板を担いで薬師岳ピークへ。


思えばピークを踏んだのは、この山行4日目にして初めてではないか。

さて、ここからの行動であるが。
予定では、金作谷を滑り降りて黒部川横断、もう一回広河原付近で横断ということだったが。薬師岳から見える広河原は到底渡渉できる状態ではないこが明らかだった。黒部川を絡めるのは諦めて、素直に稜線を辿ることに決めた。

板を担いだまま2832ピークへ。そこから滑降開始。諦めきれず何度も黒部川をのぞくが、渡渉できないという結論は変わらず。

無線交信時刻の12時が近づき間山のピークに向かって滑り込むと、なんとそこには室堂からオートルートを開始したY田パーティーがいる。これもまたすごい絶妙なタイミング。

他パーティーとの交信は取れなかった。Y田パーティーとはお互いの健闘を祈ってそれぞれの方向に別れる。

Y田パーティーと分かれる(N島さん撮影)

我々はスゴ乗越まで滑ってシールに替える。シールでアップダウンを繰り返し、スゴ沢の頭手前で板を担ぐ。

越中沢岳への登りは長い。急なガレ場を登り、ようやく到着。五色ヶ原の小屋も見える。休憩をとってヌクイ沢に滑り込む。


表面はシュカブラで固い。

(N島さん撮影)

下部でようやく雪が緩む。


最後の登り返しは、日の入りとの追いかけっこ。


(N島さん撮影)

日が沈む前に五色ヶ原山荘に到着。小屋開けのスタッフがいて素泊まりで泊めてもらう。


■5月3日(月)晴れ
■タイム:7:40五色ヶ原山荘~8:40獅子岳~9:20御山谷~10:40一ノ越(大休止)~12:00雄山~13:00雷鳥沢ヒュッテ(泊)

引用元:株式会社ウェザーマップ『気象人

この日は室堂までということでのんびり出発。ザラ峠までは滑って移動して、そこから板を担いで登りだす。先行の4人組を追い越し、獅子岳へ。ずいぶん速いペースだ。

絶妙なザラメを御山谷まで落とす。

(N島さん撮影)

御山谷をひたすら登って一ノ越へ。ここの小屋は何もかにも格安で販売している。カップラーメンを食べながら大休止。

板を担いで雄山へと。これもN島さんの超ハイペースに引っ張られる。

雄山ピークを眺める(N島さん撮影)

雄山神社を拝んで、シュプールだらけの固い山崎カールへ。そのまま雷鳥沢ヒュッテへと流れ込む。
温泉で5日ぶんの汗を流し、ビールを飲んで、豪華食事に腹を満たす。疲れが出たろうか、私は熱が出て食事のあとすぐに眠りに入った。


■5月4日(火)くもりのち晴れ
■タイム:7:30雷鳥沢ヒュッテ~9:30奥大日岳~12:00白萩発電所前の橋

引用元:株式会社ウェザーマップ『気象人

スッキリしない天気。奥大日は霧の中。ご飯をたべて出発。気温がやたら高い。風はない。霧はかかっているが薄く、青空が透けて見える。じきに晴れることがわかる。

(N島さん撮影)

途中いやらしいトラバースを交えて奥大日へ。
そしていよいよピークの雪庇がきれたところからカスミ谷へドロップ。


傾斜はそれほど無い。
別の場所の雪庇が崩れる鴨しれない。長居はしたくない。殺鼠と通り抜けたいが、そこは絶悪の雪のコンディション。解けた新雪で全然滑らない。転びそうになるのを耐えるのがやっと。

なんとか広い大地に抜けて休憩。

そこから先はいつ終わるともしれないデブリ地獄。


デブリに散々悩まされて右俣まで。あとはなんとかこなして林道に出る。林道も延々と歩き、馬場島線まで出ると、一足先に下山していろいろ手配してくれたN島さんがタクシーとともに迎に来てくれた。




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