2009年9月15日火曜日

鳴沢

痛恨のカメラ忘れにつき文字だけの報告。

週末の土~月で黒部川支流の鳴沢へ。

新越沢を予定していましたが、思いのほか雨が上がるのが遅く増水した新越のゴルジュ突破はあまりにもリスクが大きい。転進先として予定していた鳴沢もこの雨じゃ、、、と。敗退も脳裏を掠めたが。。。

黒部ダムの下流の右岸に位置する鳴沢。黒部ダム下流右岸には、上流から順に、赤沢、鳴沢、新越沢と入り込む。これらの沢へのアプローチは左岸の日電歩道を下って出合で渡渉する。ただし渡渉ができるのは黒部ダムの観光放水が始まる朝の7時(時期によって異なる)以前が条件となる。ひとたび放水が始まれば、毎秒3トンの水が加わり渡渉は不可能とのこと。渡渉するためには前夜に出合付近まで入っておく必要がある。つまり1泊2日の行程の沢も、3日間を要することになる。

■場所:黒部川支流鳴沢
■メンバー:M浦さん(L)、私
■9月12日(土)雨 16:00扇沢~16:15黒部ダム~BP

全国的な雨の予報の土曜日。この日はアプローチだけだが、雨が上がる時間が心配。予報では夕方には止むとのことだが、その気配は全くない。雨と寒さで眠れない夜を過ごす。

■9月13日(日)雨のちくもり 3:40出発~5:30鳴沢出合~9:30大滝~14:30二俣(泊)

新越沢を照準に、観光放水が始まる前に出合までいけるように早出するが雨は止む気配はまったくない。むしろ強くなっている。敗退色が濃くなりつつ、新越沢はあきらめて、まずは鳴沢出合を偵察。

鳴沢の出合に到着したのはちょうどヘッデンが要らなくなる頃の5:30。雨の影響もあってそこそこの流量の黒部川。渡渉の可能性を探っているうちにザブンと飛び込んで渡渉してしまうM浦さん。手招きに応じて渡渉する私。

と、ここまできたら行くしかない。

雨はまだまだ強い。どうやら日本海の低気圧を取り巻く雲が去り際に雨を降らしているようだ。



それにしても鳴沢、記録がほとんど無い。事前に調べるも、見つけた遡行記録は登山体系と、志水哲也氏の記録のみ。そしてM浦さんの滑降記録だけか。

ガチャ類を装着して覚悟を決める。
入渓して感じたのは、岩がヌメる。脇の斜面は崩壊したガレが多い。見た目では分らない難しさがある。さらに黒部ならではのV字の渓谷。とくにこの鳴沢はV字が顕著。

5m~10mの滝が連続する。登れる滝もあるが、登れそうで登れない滝が多く一筋縄にはいかない。

チョックストーン滝を左から登ろうとしたが意外と悪く、左の壁を巻くことにした。ここはM浦さんリードでロープを出す。ハーケンで3箇所、潅木で1箇所の支点を作る。私がフォローで登る。1箇所ハーケンが抜けず。ヤケになってブッたたいたらその拍子で抜けてハーケン落っことす。あぁ~ BDのハーケンが~!!初歩的なミス。

さらにチョックストーン滝は私がリード。カムエイドで登りザック荷揚げ。

ゴーロ帯を進むと30mの大滝が現れる。右の泥壁&藪を私がリードで巻き上がる。50mいっぱいに伸ばす。2ピッチ目で滝の上部に出る。さらに30mの滝。ロープはつないだまま移動。右から3ピッチの巻きと懸垂1回。またすぐに出てきた10mの滝。傾斜はそれほど無く登れそうに見えるが、ヌメッていていやらしい。ここは右のルンゼを巻いて藪をトラバースして抜ける。この時分は雨は上がっていた。晴れ間も見えるが太陽は雲の中。

ゴーロ帯を抜けるとまた出てくる、見た目以上に悪い滝。水線のすぐ右のガレを登ると、あと一手で滝を越えられそうに見える。ところがその上部も悪かった。ここはロープを出してM浦さんリードで登る。

幕場を探す。以外にもブヨが多い。虫対策皆無。V字渓谷らしく、良い幕場はなかなかない。探しながらどんどん遡行し、二俣手前にようやく見つける。時間をかけて寝床を作って焚き火をして寝る。異様に寒い。夜空は雲ひとつ無い。私は羽毛服を持ってきていたが、羽毛服を持ってきていないM浦さんはさぞかし寒かったに違いない。

■9月14日(月)晴れ 6:00出発~9:20赤沢岳~14:00扇沢

寒すぎて寝ていられない。まるで冬の気分。朝食のラーメンはこんな寒い朝にぴったり。

この幕場は絶景なり。剱岳のモルゲンロート、さらに黒部別山の大タテガビンを正面に見る。黒部別山~黒部の奥地に谷川岳がひとつそびえている~と形容されるほどの山にもかかわらず一般登山道が整備されていない玄人好みの山。

ルートは右俣へ。ガレが多い。8mの滝は私がリード。一見ロープ無しでもいけそうだが、浮石が多い上にヌメっている。ハーケンとカムで支点をとって慎重にリード。終了点はハーケン2本でビレー。

ガレを登ると水量は激減する。給水してガレを登る。途中から樹林帯に入る。太陽の日差しがすぐそこの山の斜面まで届いているのが見える。周囲の草木には霜が降りている。どおりで夜は寒かったわけだ。冷たい霜の中を掻き分けて8:30。本山行初となる太陽とのご対面。太陽のぬくもりを感じつつ赤沢岳のカールに出てゆっくりと黒部別山を眺める。

つめ上げると、ドンピシャで赤沢岳の頂上の看板。看板には「植生保護のため立ち入り禁止」の文字。

ゆっくり大休止。

あとは長い下山路。新越山荘、種池山荘経由で扇沢へ下山。登山道が整備されているので、針ノ木経由よりも早く下山できるだろう。下山後のコーラが体に染み入る。



※要注意メモ
今回ロープは38mと50mの2本を持っていった。途中、38mロープの包皮が破れ中の繊維があらわになっているのに気づいた。いつそうなったのかは正確にはわからないが、原因は落石としか考えられない。幸い2本のロープを持参していたために、その後の山行には支障をきたさなかったが、これが50mロープだったらもっと大変なことになっていただろう。山行中は落石によるロープの破断の危険が常にあるということ。それゆえに自ら落石を起こすということは絶対にあってはならない。とくに懸垂下降のとき。リードやビレー中も落石に注意を払うのはもちろん、周囲に鋭利な岩が無いことを確認するなどして、ロープは丁寧に扱わなければならない。

2 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

毎度、楽しみに読んでいます。
が、毎度毎度、緊張しながら読んでいます。

でも、幕営地での朝の件は景色を想像しながら、大きな気分にひたれました。
想像以上の絶景なんでしょうね。
たまには文章だけの記録も、いいのかな。

タケ さんのコメント...

舌足らずな文章でしたがちょっとでも伝わってよかった。
っていうか、あの絶景と境遇はどんな雄弁家でも表現しえないと思うな。
もちろん写真でも無理。

あの日あの時間にそこにいないと見れない絶景。別に狙ってるわけじゃないけど、たまたまだけど、巡り合えてよかった。