2009年4月1日水曜日

黒部横断

M浦さんからのお誘いを受け、黒部横断に行ってきました。M浦さんは、黒部横断は今回で9回目となる大ベテラン。おおいに勉強させてもらいました。

日程は天気次第というサラリーマンスキーヤーには厳しい条件ではありましたが、29日~31日(1泊2日+予備日)に決定し、月曜と火曜に休暇を取得して決行。
Fatな板しかもっていない私は道具の面で心配していましたが、M浦さんが北岳バットレスを滑った板で、その後N島さんがしばらく使用していた板を借り受けることになりました。

Atomic βride。名器です。

初めて使う板ということで、それはそれで心配なのですが、なんといってもその軽さが魅力。この軽さを知ってしまったらもう重い板には戻れない。。。

とにかく、
天気良し、パウダー良し、湖面凍結良し。予想以上のラッセルで時間がかかって予備日を使ったものの、充実の山行となりました。



■3月29日(日)晴れ 4:12 日向山ゲート - 6:30 扇沢 - 13:30 スバリ岳 - 17:00 黒部湖畔 (距離:13km 登り:1700m 下り:1300m)

タクシーにて日向山ゲートに移動。きれいに除雪された道路を1時間歩いた後、林道からスキーにて移動。雪は少なく、普段は雪で埋まっているはずの堰堤が出ていたり沢が割れていたりで、巻きやスノーブリッジの通過を強いられる。それでいて週半ばの降雪によるラッセルとはなんとも皮肉。雪崩もおおいに考えられるので頻繁にピットチェックを行う。


針ノ木雪渓からマヤクボ沢を登り、行動開始から8時間。ようやく針ノ木岳~スバリ岳のコルにでる。

黒部湖を眺める。


心配していた湖面の凍結具合も大丈夫なように見えたので、ここであらためて黒部横断を決める。ここからはアイゼン・ピッケルに変えて登ること1時間、スバリ岳山頂に到着。滑降ルートは大スバリ沢。いざ黒部湖に向かってドロップ!と思いきや、ラッセルを強いられた東面とは裏腹に西面は雪がない。岩が露出している。全部風で飛ばされているということか。仕方ないのでクライムダウンして滑れそうなところまで移動。

エントリーはガリガリ。
でもその後パウダー!
快適に飛ばす。。。 
つもりが、、、

慣れない細板でトップを浮かせられない。トップが雪面にもぐりこんででんぐり返し×3。荷物が多いだけにダメージが大きい。とりあえずテールを使った浅い小回りで恐る恐る板をコントロールして滑る。でも調子に乗るとまたでんぐり返し。ようやく慣れてきたころにはパウダー斜面終了。

さて、出ました大滝。山スキーには付き物の障害物。この処理をどうするかで軽く数時間の差が生じる。M浦さんは前回右岸をまいて酷く苦労したとのこと。

今回は左岸の雪壁を登って隣のルンゼに抜ける。

スマートな抜け方。
他に悪い箇所は無いはず。と思ったが今年は寡雪。もうひとつ滝が出ていた。ロープを出して偵察便を出す。その結果、右の尾根を越えると行けることが判明。

あとはデブリを処理して湖畔まで。横断は翌日に持ち越し。朝のまだ寒い時間のほうが安全確実ということ。

水のとれる川の近くでツエルトを張る。だいぶ寒い。この時期としては異様に寒い。今回は軽量化のためシュラフは薄い。防寒装備もたいして持たない。寒すぎて夜は何度も目を覚ました。



■3月30日(日)晴れ 6:00 幕場発 - 6:15 黒部湖横断 - 14:15 一ノ越 - 15:30 雄山 - 16:00 室堂 (距離:10km 登り:1500m 下り:700m)

朝イチで黒部湖を横断。朝のほうがしっかり凍っているので安全ということ。氷の上に積もった雪がモナカ状になっていて、踏むと沈む。なんだか氷が沈んでいるような感触で心臓に良くない。黒部湖の横断は3度目となるM浦さんはそんな動揺をよそに早くも対岸にたどりつく。

実は上陸も難しいポイントの一つ。流れがある箇所では氷ができないので湖から沢にそのまま入ることはできないが、いったいどこまで沢に近づけるか。度胸試しではないので安全を見てかなり手前から上陸する。アイゼン・ピッケルに切り替えて湖岸の雪のブロックを攀じ登る。

攀じ登った大地から沢に下降する際、モナカ雪に足を取られてアイゼンをふくらはぎに刺す。怪我は無いと思っていたが、あとで確認したらふくらはぎに裂傷というか穴が開いていた。流血はしていないが。



御山谷の始めは沢が出ていて、スノーブリッジの通過や巻きがけっこう悪い。狭い箇所やデブリが押し寄せている場所もあり気が抜けない。そのうえラッセルもある。このラッセルがずっと続くと思うと気が滅入る。

北に向きをかえるあたりで谷は急に開ける。このあたりからラッセルがだいぶ楽になった。あとはひたすら登るのみ。

とにかく日差しが強い。目出帽を頭までめくり上げて、めくった部分に雪をはさむ。これは効果的な冷却剤となる。ただし、雪を入れすぎると解けた水が滴って、せっかく塗った日焼け止めが落ちてしまうので注意。

黒部横断から8時間。ようやく一ノ越に到着。室堂が一望できる。雪はこの時期にしては少ないという。GW並みか。

人がいない室堂。これはアルペンルートが開通していないこの時期ならではの風景。せっかくなので雄山に登って山崎カールを独り占め(二人占め?)しようという魂胆。

アイゼンとピッケルに替えて雄山まで登る。山崎カールは上部がガリガリ。注意して標高を落とすとローソク岩のちょっと上からパウダー。これだけの好条件なら細板でもパウダーを乗りこなせる。

どこまでも続くノートラックの斜面。振り返ると2人のシュプールだけがいつまでも残っている。



贅沢な室堂の使い方。


その日は時間切れで下山できないので室堂ビバーク。前日より1000mほど標高が高い場所ということもあり、寒いことを懸念したが。懸念したとおりに寒かった。いやそれ以上に寒かった。


寒すぎて熟睡できず。


■3月31日(火)晴れ 5:30 幕場発 - 6:30 室堂乗越 - 立山川 - 8:45 馬場島 - 10:15 ゲート (距離:16km 登り:200m 下り:2000m)

下山のみだが、立山川の状況次第なので時間が読めない。情報によると毛勝谷より下は沢が出ていて時間がかかるという。早めに行動を始める。室堂乗越までの登りはウォーミングアップにちょうどいい。北面のエントリーはガリガリの箇所と、パウダーの箇所。もちろんパウダーの箇所からエントリー。いい雪。この山行最後のパウダーをしばし堪能。

1800mくらいからはターンがぜんぜんできないモナカ雪。手を斜面につこうとすると、ずぼずぼ潜って起き上がれなくなるくらいのモナカ雪。斜滑降もしくは横滑りしてキックターンでノロノロと進む。

情報どおり毛勝谷より下流は沢が出ている。


高巻などで処理。スナクボ岩屋のあたりは狭くなっていて両岸が立っている。雪崩も懸念したが、どうやらいまのところ雪は落ち着いている様子。日が当たってくると雪崩も起きてくるはず。

デブリの処理、高巻きなどを繰り返す。渡渉は1回、ここは開き直ってジャブジャブ渡って林道に出る。立山川は懸念したほど悪くなかった。朝ということが決め手だったのだろう。日中になると日差しと高温で雪崩の危険が高まり、さらに流量も増えて渡渉は楽ではなかったはず。

馬場島まで林道を滑降して黒部横断の終了。駐在員に挨拶をする。滑りと歩きを交えてゲートまで移動し、上市までタクシー。温泉につかって富山へ移動。ランチタイムの時間帯にもかかわらず祝杯を挙げる。余韻に浸ってついつい長居する。特急と新幹線で帰京。富山から眺める山々は真っ白。降ったばかりなのだろう。まだまだ滑れそう。この辺の地理に疎い私にはその山がどこの山なのかわからない。



そういえば今日はエイプリルフール♪

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